2014年1月15日水曜日

【論文】ナッツの摂取頻度が高いほど死亡リスクが低い

NEJM誌からナッツの摂取頻度が高いほど死亡リスクが低い
 ナッツの摂取頻度が高いほど、全死因死亡、死亡、心血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡のリスクが低いという逆相関関係が、2つの大規模コホート研究の解析結果として示された。米Harvard大のYing Bao氏らが、NEJM誌2013年11月21日号に報告した。

 ナッツは、不飽和脂肪酸、食物繊維、ビタミン、ミネラル、フェノール系抗酸化物質、植物ステロールといった様々な成分を含む。観察研究などから、ナッツの摂取量が多いほど、心血管疾患や2型糖尿病などの慢性疾患リスクを減らす関係が見られているが、ナッツ摂取と死亡リスクの関係は明らかではなかった。

 そこで著者らは、Nurses’ Health Study(1980~2010年)に登録された7万6464人の女性と、Health Professionals Follow-up Study(86~10年)に登録された4万2498人の男性を対象に、ナッツの摂取頻度と死亡の関係を調べた。癌、心疾患、脳卒中の既往があった人々は分析対象から除外した。

 ナッツの摂取量は28gを一皿とし、どの程度の頻度でこの量のナッツを摂取したかをベースラインと、その後2~4年ごとに尋ねた。摂取ゼロまたはほぼゼロ、月に1~3回、週1回、週2~4回、週5~6回、週7回以上、1日に2~3回、1日に4~6回、1日に7回以上のいずれかから選択するよう依頼した。

 主要転帰評価指標は全死因死亡とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。

 女性については30年、男性は24年の追跡期間中、各個人のナッツの摂取量はほぼ一定だった。摂取頻度が低い人々に比べ高い人々は、痩せており、喫煙者が少なく、運動を好み、マルチビタミンを摂取しており、野菜と果物の摂取量が多かったが、飲酒量も多かった。

 303万8853人年の追跡で、1万6200人の女性と1万1229人の男性が死亡した。

 既知の危険因子または危険因子候補として、年齢、人種、BMI(体格指数)、身体活動レベル、喫煙習慣、アスピリン使用、糖尿病/心筋梗塞/癌の家族歴、糖尿病/高血圧/高コレステロール血症の既往、総摂取熱量、飲酒習慣、赤身または加工肉/果物/野菜の摂取量、女性の場合には閉経前か後か、ホルモン補充療法の利用などに関する情報を得て、それらで調整してプール解析したところ、男女ともにナッツの消費量と全死因死亡の間に逆相関関係が見られた(傾向性のP<0.001)。

 ナッツを食べない人々を参照とすると、週に1回摂取する集団の多変量調整ハザード比は0.93(95%信頼区間 0.90-0.96)、週に1回では0.89(0.86-0.93)、週に2~4回は0.87(0.83-0.90)、週に5~6回は0.85(0.79-0.91)、週に7回以上は0.80(0.73-0.86)だった。

 週に2回以上摂取していた集団全体のハザード比は0.86(0.82-0.89)で、この集団のナッツの摂取をピーナッツとそれ以外に分けると、全死因死亡のハザード比は、ピーナッツ摂取の場合が0.88(0.84-0.93)、その他のナッツでは0.83(0.79-0.88)だった。

 男女別にナッツ摂取量と全死因死亡の関係を調べても、結果は上記と同様だった。

 死亡の危険因子と危険因子候補の保有状況に基づいて対象者を層別化し、ナッツと全死因死亡の関係を検討したところ、どのサブグループにもナッツ摂取の利益が見られたが、特に、25以上のBMI高値群で利益が大きかった。

 死因別死亡とナッツ摂取との逆相関関係は、癌死亡(傾向性のP=0.03、週に5回以上摂取する人々のハザード比は0.89、0.81-0.99)、心血管疾患死亡(P<0.001、0.75、0.62-0.84)、心疾患死亡(P<0.001、0.71、0.63-0.81)、呼吸器疾患死亡(P=0.005、0.76、0.59-0.98)について有意だった。神経変性疾患、脳卒中、感染症、腎疾患、糖尿病による死亡との間には有意な関係は見られなかった。

 2つの独立した大規模コホートにおいて、ナッツの摂取頻度と、全死因死亡、癌、心血管疾患、呼吸器疾患による死亡の間に逆相関関係を認めた。

 原題は「Association of Nut Consumption with Total and Cause-Specific Mortality」、全文は、NEJM誌のWebサイトで閲覧できる。

2014年1月9日木曜日

フォリアミン (関節リウマチ)

【背 景】
メトトレキサート(MTX)が減量になった患者で、フォリアミンが処方削除になっていた。
Drからは、「MTXを減量するので、フォリアミンはいらない」と言われた。


【テーマ】
MTX服用患者のフォロアミン処方削除について


【結 論】
消化器症状(口内炎、下痢、食欲不振)、肝酵素上昇、血球減少、脱毛などの用量依存性副作用を予防する目的で葉酸を服用する。

※葉酸の併用によりMTXの効果が減少する症例がみられる(本邦)→MTXの投与量が少ない

MTX0.15mg/kg未満の低用量では葉酸併用は必ずしも必要ではない

⇒葉酸併用推奨
 1.高用量0.2mg/kg以上
 2.副作用リスクが高い
 3.腎機能低下
 4.高齢者
 5.複数のNSAIDs使用

・MTX用量によっては、葉酸含有のサプリメントや総合ビタミン剤の服用により、効果が減弱する可能性もある


【情 報】
葉酸投与量は5mg(フォリアミン1錠)/週が一般的

葉酸/MTX ≧ 1では治療効果の減弱がみられる頻度が多い

葉酸製剤とMTXの投与間隔→明確な結論なし
葉酸をMTX投与後、半減期の分布以内に投与した成績では明らかに治療効果が減弱
→MTX最終服用後24~48時間空けて服用すれば、治療効果には大きな差はないと考えられる


参考書類
関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン 2010年9月
http://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_MTX.pdf

 

2014年1月6日月曜日

【大学院】臨床検査学特論:理系英語

concordance lines」について

concordance
 【名詞】
 1.一致{いっち}、調和{ちょうわ}【動】concord
 2.用語索引{ようご さくいん}、コンコーダンス
 3.〔遺伝学{いでんがく}における双生児{そうせいじ}の〕一致

Using Concordance Lines
http://www.nottingham.ac.uk/alzsh3/acvocab/concordances.htm

concordance lines」の例
1
Is Oxfam
interested
in disarmament?
2
But she was not
interested
in education for its own sake.
3
Parents are obviously
interested
in the various skills and ...
4
.. to change as more women become
interested
in outdoor pursuits.
5
In other words, he was not
interested,
as Singer was, in proving ...
6
.. last month said a range of other
interested
parties had emerged, including ..

2014年1月2日木曜日

【大学院】臨床検査学特論:貧血

講師:奥田 浩人  先生

★覚えたほうがいい検査値

AST 40 (基準値10~40 IU/L)
ALT 40 (5~45 IU/L)

ΓGTP 10台 (♂:80IU/L以下、♀:30IU/L以下)

T.B(トータルビリルビン)1.2 (0.2~1.2mg/dL)

TP(総蛋白)6 (6.5~8.2g/dL)
Alb(アルブミン)4 (4.5~5.0g/dL)

TC(総コレステロール)250 (120~220 mg/dL)
TG(中性脂肪)150 (30~150 mg/dL)

BUN(尿素窒素)20 (8.5~20.0 mg/dL)
Cr(クレアチン) 2はダメ! ♂:1.0、♀0.8 (♂:0.6~1.0mg/dL ♀:0.5~0.8mg/dL)

血小板 15~20万/mm3 (13~35万/mm3)
Na 135~150
K 3.5 (3.5~5)


・鉄代謝 

鉄の体内分布
 ヘモグロビン鉄2/3+貯蔵鉄1/3(フェリチン、ヘモジデリンとして肝臓、脾臓に貯蔵されているFe)

Fe2+が吸収されやすい!

Fe3+(食物中に含まれるFeの多くは3価鉄)
 ↓
Fe3+⇒Fe2+(胃酸により2価の鉄に還元される)
 ↓
十二指腸で吸収


鉄の体内動態

血清鉄:トランスフェリン(血液中での鉄輸送蛋白)と結合した鉄
フェリチン:貯蔵鉄量の目安


・貧血

定義:末梢血のヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値、赤血球数が基準値以下になった状態

原因
①赤血球の産生量減少
 原材料(Fe、VB12、葉酸)の不足
 骨髄の造血機能の低下

②赤血球の消失量増大
 出血(急性・慢性)
 溶血の亢進

③その他
膠原病、悪性腫瘍、慢性炎症


症状
 頭痛、めまい、易疲労感、動悸、息切れ、眼球結膜蒼白


MCV(平均赤血球容積):赤血球の大きさ 80~100正常













・鉄欠乏性貧血
概念:鉄欠乏により赤芽球のヘモグロビン合成が低下して起こる

最も頻度の高い貧血で1/2を占める

原因
 ①吸収低下(胃切除、無胃酸
 ②妊娠、授乳
 ③月経

症状
 ①スプーン爪
 ②口角炎、舌炎
 ③異食症

検査値
 ①小球性低色素性貧血 ⇒ MCV↓
 ②貯蔵鉄(フェリチン)↓

治療
 ①経口Fe剤(第一鉄Fe2+) 貯蔵鉄た貯まるまで(3~6ヶ月)継続



・巨赤芽球性貧血
概念:骨髄に巨赤芽球が出現する貧血

原因:VB12、葉酸が欠乏
    核のDNA合成にはVB12と葉酸が必要→欠乏すると、細胞は大きくなるが、核が未熟な巨赤芽球になる

①VB12欠乏
  VB12は胃の壁細胞から分泌される内因子と結合→回腸で吸収
  胃全摘→内因子量が減る
  VB12摂取不足→VB12は肉に含まれる
 

②葉酸欠乏
  メトトレキサート、アルコール

症状
 ①舌乳頭萎縮
 
 ②神経障害(VB12欠乏症)

検査値
 ①大球性正色素性貧血⇒MCV↑、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)→
 
 ②悪性貧血:坑内因子抗体(+)、抗胃壁細胞抗体(+)
 ③骨髄にて巨赤芽球(+)

治療
 ①VB12不足には、VB12製剤の筋注
 ②葉酸欠乏には葉酸内服



・再生不良性貧血
概念:骨髄における造血幹細胞の障害により、汎血球減少を呈する貧血

原因
 先天性:Fanconi貧血
 後天性:特発性85%
       続発性→薬剤性(クロラムフェニコール、抗がん剤)、ウイルス

症状:汎血球減少に伴う症状
 ①赤血球減少:貧血
 ②白血球減少:易感染
 ③血小板減少:出血傾向

検査値
 ①正球性正色素性貧血(網赤血球↓)⇒MCV→、MCHC→
 ②汎血球減少
 ③貯蔵鉄(フェリチン)↑
 ④血清鉄↑

治療
 ①造血幹細胞移植
 ②免疫抑制療法
 



・溶血性貧血
概念:何らかの原因により赤血球破壊の亢進(寿命の短縮)により生じる貧血
 
 通常、赤血球の寿命は120日

原因
 先天性:G6PD欠損、PK欠損
 後天性:自己免疫性溶血性貧血

溶血の生じつ場所により、血管内溶血と血管外溶血(脾臓などの網内系にて、赤血球の寿命前に破壊される)がある

症状
 ①黄疸、胆石
 ②脾腫
 

 
検査値
 
 ①正球性正色素性貧血(網赤血球↑)⇒MCV→、MCHC→ :赤血球がなくなるので、その前の網赤血球が増える
 ②間接ビリルビン↑:脾臓で赤血球が破壊され、ヘモグロビンの代謝産物である間接ビリルビンが増加

 
 ※ビリルビンについて
  ビリルビンとは、古くなった赤血球が破壊されるときに生成される黄色い色素です。
  ビリルビンは血液で肝臓に運ばれ、胆汁中に捨てられます。 肝臓で処理される前
  のビリルビンを「非抱合型(間接)ビリルビン」※1、処理された後のビリルビンを
  「抱合型(直接)ビリルビン」といい、あわせて総ビリルビンと呼びます。
  通常、総ビリルビンは血液中にごくわずかしか存在していません。

  基準値:総ビリルビン:0.2~1.2 mg/dL


治療
 ①副腎皮質ステロイド
 ②摘脾
 ③免疫抑制剤

ポイント
 赤血球の破壊
 骨髄は問題なし→製品(赤血球)が悪い
 赤血球→脾臓で壊される



・腎性貧血
概念:慢性腎不全により、エリスロポエチンの産生低下のために起こる貧血

治療
 遺伝子組替ヒトエリスロポエチン製剤

正球性